頭木弘樹さん著「食べることと出すこと」

ひとりごと
スポンサーリンク

「食べることと出すこと(頭木弘樹著)」という本を、図書館でたまたま見つけて読んでいたら、自分の脱ステロイド後の生活や、徐々に変わっていった人生観と非常に似ているなと思いました。やはり病気は違えど苦しむだけ苦しむと、人ってだいたい同じような人生観になるんじゃないかなと感じました。
アトピーや脱ステで何年も苦しんでいる人なら共感できる内容ではないかと思います。

この本の著者は20歳で潰瘍性大腸炎という難病になります。難病とはいえ、この病気は症状がかなりの軽度から超重症まであるようです(アトピーに似ています)。腸に炎症が起き、常人では考えられないくらいの凄まじい下痢が慢性的に続く病気で、自己免疫の異常から発症すると言われているそうです。重症度の幅が大きいのと自己免疫の疾患というのが、アトピーに通ずるところがあります。

気持ちが弱いから病気になっているのではないかと、健常者には思われてしまう辛さと孤独が書かれています。人と同じものが食べれないと人間関係が次第に悪くなっていくといったことが書かれていました。同じ席で同じ物を食べるということが、人と人とを繋いでいる。それが出来なくなると人間関係にも悪影響が出てくると。

この病気になると、なんとか寛解期を保とうと思って、何を食べたらいいとかよくないとか、どういうことをするといいとかよくないとか、そういう法則を見つけようとする中略問題は、いくら気をつけても再燃するとか、再燃にパターンがないとか、コントロールがまったくできない場合だ。

食べることと出すこと 頁300〜301

病気になってから十年くらい経つと、「もう病気のベテランだね」などと医師から言われたりする。しかし、ずっと荒海で翻弄され続けているだけの船乗りは、いまだに何の技能も身につけていない。ただただ疲れ果てているだけだ。

食べることと出すこと 頁302

この、「ずっと荒波で翻弄され続けているだけの船乗りは何の技能も身につけていない、ただただ疲れているだけ」というのは非常に共感できるセリフです。どんな方法を試してみても目立った改善はせず、良くなってきたと思っていてもすぐにまたぶり返す。そんなことを繰り返しているうちに精神はどんどん疲れ切ってしまいます。

病気をコントロール出来ていないからこそ模索を続ける、けれどコントロールできる方法は一向に見つからない。長年病気を患っているからといってその病気の専門家になれるわけでも、正しい治療法を人に提案できるようになるわけでもない。そう思っているとしたらきっとそれはただの思い上がり。どんな病気も同じ治療法が全ての人に効くわけでもないし、病気の原因が千差万別である以上「自分が良くなったから他の人にも効果があるはず」と思うのは危険なことでもあります。

色々なことを医者にすすめられては試し、ネットで効果のありそうな方法があれば試し、自分でもいろいろな努力をし、期待をするたびに失敗し絶望する。出口の見えないトンネルを彷徨うという辛さ、痛いほど共感できる内容でした。病気が違っても全く同じような精神状態になることがあるということ。

それが病気ではないにせよ長い間つらい経験をした人同士というのは、真に分かり合える可能性があるのかなとも感じました。

コメント